一般貨物自動車運送事業の資金について

運送業の資金要件イメージ

この投稿の目的と想定する読者さま

目的

  • 一般貨物自動車運送事業を始めるために必要な資金を知ってもらうこと
  • 旧基準で許可を取得された運送事業者さまに、現在の許認可の価値について知ってもらうこと

想定する読者さま

  • 一般貨物自動車運送事業の開業を検討している方
  • 開業の相談を受けたトラックディーラー様
  • 一般貨物自動車運送事業の開業について相談を受けた行政書士や税理士の先生方 など
目次

一般貨物自動車運送事業の資金について

令和元年11月1日に施行された改正貨物自動車運送事業法の一番インパクトのあった内容がこの資金要件です。

およその必要額で、2,000万円前後と言われており、改正前と比べると1,000万円近く上乗せで必要となっています。

その状況を理解して頂くため、本稿では以下を2大サブテーマとして解説致します。

  • 最小規模で開業した場合でいくら必要なのか
  • 何故、それほどまでに差額が発生したのか

最小規模で開業した場合でいくら必要なのか

繰り返しになりますが、およそ2,000万円ぐらいがひとつの目安になります。

既に自己所有のトラックが数台ある、など条件によっても違うので、何故その金額が目安となっているか、ひとつずつ確認していきましょう。

金額の算出には国土交通省の資料を用いていますが、平成23年1月~3月と少し古いため、調整して使用しています。

本稿は、車種を除いて、一般貨物自動車運送事業の許可要件の最小値を狙って検討しています。

  • 整備・運行管理者:1名(同一人物)
  • 選任運転者:5名
  • トラック:5台リース(全て4t)
  • 建物:賃貸
  • 駐車場:賃貸

費目一覧

こちらの記事と重複になりますが、一般貨物自動車運送事業に必要とされる資金の費目は、中部運輸局の公示基準に以下の通り定められています。

費 目 内容
人件費 (役員報酬+その他給料)×6ヶ月分
燃料油脂費
及 び
修 繕 費
(燃料油脂費+修繕費)×6ヶ月分
車両費

購入の場合:取得価格
分割購入の場合:頭金+(割賦金×12ヶ月分)
リースの場合:リース料×12ヶ月分

建物費 購入の場合:取得価格
分割購入の場合:頭金+(割賦金×12ヶ月分)
賃貸の場合:敷金等+(賃借料×12ヶ月分)
土地費 購入の場合:取得価格
分割購入の場合:頭金+(割賦金×12ヶ月分)
賃貸の場合:賃借料×12ヶ月分
器具、工具、什器、備品等 取得価格(割賦未払金を含む)
保険料 自賠責保険:保険料×12ヶ月分
任意保険:保険料×12ヶ月分
損害賠償保険(※危険物運送事業者のみ):保険料×12ヶ月分
各種税 (自動車税+自動車重量税)×12ヶ月分
環境性能割
登録免許税
その他

(道路使用料+光熱水料+通信費+広告宣伝費等)×2ヶ月分

これらの相場等を確認していきましょう。

人件費

給与等

人件費は愛知県の最低賃金(令和2年3月15日時点)が926円なので、これを基準に試算します。

(選任運転者5名 × 926円 × 8時間 × 22日) + 300,000円(役員報酬)} × 6ヶ月分 = 6,689,280円

※役員報酬については自由に決めることができますが、1ヶ月の生活費として30万円は必要であるという前提で計算しています。

法定福利費

健康保険 331,119円 + 厚生年金保険 612,069円 + 雇用保険料 29,335円 + 労災保険料 44,003円 = 1,016,526円

厚生福利費

これは、給与・手当・賞与の2%を見込んだ計画をしなければならないので、給与等から役員報酬を引いた額の2%を計算します。

4,889,280円 × 2% = 97,785円

燃料油脂費及び修繕費

燃料油脂費と修繕費を分けて計算します。

燃料油脂費

過去の資料の燃料油脂費を元に計算します。

算出時に検討されている主な費用は以下の通りです。

  • 軽油単価
  • 燃費
  • オイル単価
  • オイル効率

(1ヶ月あたり81,090円 × 5台) × 6ヶ月分 = 2,432,700円

修繕費

(1ヶ月当たり37,028円 × 5台) × 6ヶ月分 = 1,110,840円

リース料(車両費)

統計データ上、車両の取得と税金がリース料に含まれるものが多く、その他修繕や自賠責に係る費用は各自負担であるものが一般的でした。

本稿では、その一般的な内容を採用し、計算しています。

(1ヶ月当たり109,716円 × 5台) × 12ヶ月分 = 6,582,978円

建物費

愛知県名古屋市の平均賃料から約20㎡の事務所を借りた場合の賃料から算出しています。

1ヶ月当たり57,397円 × 12ヶ月分 = 688,764円

土地費

愛知県名古屋市近辺で出ている賃貸物件を参考にしています。

1ヶ月当たり150,000円 × 12ヶ月分 = 1,800,000円

器具、工具、什器、備品等

パソコンや事務机、キャビネットなどだいたいで見繕ったものです。

500,000円

保険料

保険料は自賠責保険と任意保険を検討します。

※危険物運送事業者の場合は損害保険も検討する必要があります。

自賠責保険

自賠責保険料算出機構のデータを参考にしています。

1年当たり30,530円 × 5台 = 152,650円

任意保険

某保険会社で対物200万円にて試算した結果です。対物200万円は許可上、最低限必要な保証とされています。

1年当たり342,000円 × 5台 = 1,710,000円

各種自動車関係税

本稿は、リース契約を例としており、一般的に各種車両に係る税金についてはリース料に含まれておりますので、割愛します。

登録免許税

120,000円

その他

水道光熱費、通信費等

1ヶ月あたり25,000円 × 2ヶ月分 = 50,000円

合計

これらを合計すると、22,951,523万円です。

運送業の開業資金目安が2,000万円とされる理由がおわかり頂けたと思います。

ただこれはほんの一例で、例えば、車両を4t車より下のサイズのものに変えたり、リース予定のものを中古車にするなど、工夫次第で減額は可能です。

何故、それほどまでに差額が発生したのか

これはズバリ、法改正があったからです。

令和元年11月1日施行の法改正の趣旨の1つに、事業許可基準の明確化というものがあります。

そのお題目に従って、事業の継続遂行のための経済的基礎の審査基準が詳細・厳格化されたことが原因で必要な資金がぐんと上がってしまいました。

資金不足で運送事業を始めてしまうと、サービスを利用される方に迷惑がかかるため致し方ない改正でもあります。

では、中身はどのように変わったか確認してみましょう。

費目新旧対照表

費 目 内容
人件費 (役員報酬+その他給料)×2ヶ月分 → 6ヶ月分
燃料油脂費
及 び
修 繕 費
(燃料油脂費+修繕費)×2ヶ月分 → 6ヶ月分
車両費

購入の場合:取得価格
分割購入の場合:頭金+(割賦金×6ヶ月分 → 12ヶ月分

建物費 購入の場合:取得価格
分割購入の場合:頭金+(割賦金×6ヶ月分 → 12ヶ月分
賃貸の場合:敷金等+(賃借料×6ヶ月分 → 12ヶ月分
土地費 購入の場合:取得価格
分割購入の場合:頭金+(割賦金×6ヶ月分 → 12ヶ月分
賃貸の場合:賃借料×6ヶ月分 → 12ヶ月分
器具、工具、什器、備品等 取得価格(割賦未払金を含む)
保険料 自賠責保険:保険料×12ヶ月分
任意保険:保険料×12ヶ月分
損害賠償保険(※危険物運送事業者のみ):保険料×12ヶ月分
各種税 (自動車税+自動車重量税)×12ヶ月分
環境性能割
登録免許税
その他

(道路使用料+光熱水料+通信費+広告宣伝費等)×2ヶ月分

前半部分で用いた例を旧基準に振り替えて計算し、額を算出します。

※旧基準では、リース料に関する記載はありませんが、そのまま、リース料の見積期間を12ヶ月から6ヶ月に振り替えて計算します。

差額一覧

費 目 内容 差額
人件費 7,803,591円 → 2,601,197円 5,202,394円
燃料油脂費
及 び
修 繕 費
3,543,540円 → 1,181,180円 2,362,360円
車両費 6,582,978円 → 3,291,480円 3,291,498円
建物費 688,764円 → 344,382円 344,382円
土地費 1,800,000円 → 900,000円 900,000円
器具、工具、什器、備品等 500,000円 なし
保険料 自賠責保険:152,650円
任意保険:1,710,000円
なし
各種税
その他 50,000円 なし
差額合計 12,100,634円

概算ではありますが、単純計算でこれだけの差額がでています。

新規に運送業に参入する計画のある事業者様にとっては、大きな問題です。

他方、旧基準で許可を取得された運送事業者様にとっても、関係の無い話ではありません。

一般貨物自動車運送事業には、巡回指導監査等があります。

仮に、それらによって許可の取消を受けたとき、5年後改めて許可を取り直そうとした場合にこの基準が重くのしかかります。

とは言え、そういった事由に当たらない限り、改正によって参入障壁はとても高くなりました。

その恩恵を活かすべく、巡回指導等の対策をしっかり行って、許可状態を守っていきましょう。

関連リンク

運送業許可における資金要件の概論についてはコチラ

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まとめ

この記事で抑えておきたい2つのポイント

  • 資金要件がとても厳しくなったこと
  • 既存運送業者にとってはチャンスである一方、再参入が難しくなったため法令遵守体制の整備が急務であること

許可申請のサポート

本稿によって、許可条件等についてはわかったものの…

  • 運輸支局まで行く時間がない…
  • 書類の作成が面倒…
  • もしかすると無許可で営業している状態かもしれないから不安…
  • 1度持ち込んだけど受付すらして貰えなかった… など

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    この記事を書いた人

    運送業などを経て行政書士事務所を開業。 一般貨物自動車運送事業の手続きを始めとした自動車関連業務の手続きに特化。

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