2024年改正対応!改善基準告示の拘束時間ルールをわかりやすく解説

改善基準告示に関する拘束時間の説明図
ご相談者さま

2024年4月から新しいルールになったのは知ってるし、しっかり守ってもらってるよ

行政書士土井孝仁

それは素晴らしいですね。
ではちょっとクイズです。1日の拘束時間が15時間ぴったりでした。
これはセーフかアウトどちらでしょう?

ご相談者さま

えーっと、、、1日の拘束時間は15時間までだけどぴったりって良いんだっけ?
ちょっと自信がないかもしれません。。

行政書士土井孝仁

正解はセーフですね。
15時間を超えたときから違反として扱われます。
ささいなことですが、うっかりルール違反を起こさないよう、ぜひこの記事でおさらいしていってくださいね。

目次

改善基準告示における拘束時間の超基本

これからルールを覚えていくうえで拘束時間について基本を覚えておきましょう。
まず、大原則として拘束時間とは始業から終業までの時間を指します。

基本の労働時間はもとより、帳票類整理等にかかるデスクワークや休憩時間・待機時間・荷積み・荷下ろしなど、休憩時間も含めたあらゆる活動が全て拘束時間に含まれます。

そして、拘束時間は休息時間をとることでリセットされます。

よく似た言葉で休憩時間がありますが、休憩時間と休息時間は別物です。

このセクションでは、あくまで休息時間をとったときにだけ拘束時間がリセットされるということと、休憩時間は拘束時間に含まれるということ、この2点をしっかり整理しておきましょう。

拘束時間は大きく4つの観点からチェックしよう

さて、基本につづいては拘束時間を分解して見てみましょう。
ズバリ、改善基準告示に定められている拘束時間の考え方は大きく仕分けすると次の4つに分けられます。

この4つにそれぞれ上限の規制が設けられていて、それを超えないようにしなければなりません。
1日あたりの規制は守れていても、1週・1月・1年のどこかで違反があれば、それは立派なルール違反で行政処分の対象になってしまいます。
次のセクションからは4つに仕分けたそれぞれの基準を確認していきましょう。

2024年4月スタート!改善基準告示のうち拘束時間1年あたりのルール

まずは1年あたりの拘束時間に関するルールを見てみましょう。

1年あたり 3,300時間以内(労使協定により3,400時間まで延長可)

多いのか、少ないのかはじめて見た人はちょっとイメージしづらいですね。
このセクションではそれぐらいの感覚で全く問題ありません。
ただ基準の数字に加えてひとつだけ覚えておいて欲しいことがあります。
それは、この基準が作られる上で検討された過程です。
難しいことを言っているようですが、そんなことはありません。
次の表を見てみましょう。

1年間の法定労働時間 2,080時間
1年間の時間外労働時間  960時間
1年間の休憩時間     260時間

途中の計算式は省きましたが、文書を読むと1週あたりの労働日数は5日を基準とし、休憩はきっちり1日1時間、時間外については月80時間を基準として計算されているのです。
また、前述のとおり休憩時間は1日1時間を基準としているので、年間の労働日数は260日が基準となります。
つまり休日の数は365日から260日を引いて105日を基準としているようです。
皆さんは同等またはそれ以上にお休みを取れていますか?

行政書士土井孝仁

もちろん年間の出勤日数が増えれば、1日の拘束時間は少なくなります。
この相関関係について、しっかり覚えておきましょう。

2024年4月スタート!改善基準告示のうち拘束時間1月あたりのルール

続いては1月あたりのルールをチェックしていきましょう。

1月あたり 284時間(労使協定を締結した場合、年間6ヶ月までは310時間)

さて、この値について重要なポイントを抑えておきましょう。
ズバリ、1月の基準における重要なポイントは、小さい方の基準(284時間)を毎月守っていても、年の基準を超えてしまうのです。次の計算式を見てみましょう。

284時間 × 12ヶ月 = 3,408時間

1年の原則基準である3,300時間はおろか、労使協定がある場合の上限値である3,400時間をも超えてしまっています。

そのため、単純に月の基準ばかりを意識して勤務スケジュールを組んでしまうと、知らず知らずのうちに、年のルールを破ってしまうことになってしまいます。

では、実際に経営者の方や労務管理を担当される方が基準とすべき月の拘束時間はどうあるべきか検討してみましょう。
まずは単純に1年の各基準を月数の12で割ってみましょう。

スクロールできます
年基準/12年間 3,300時間年間 3,400時間
1月あたり275時間約283時間
年基準からみた月の基準

この通り、月の基準とされる284時間を単純視することの危険性がより分かりやすくなりましたね。
さらに、最大基準の310時間と275時間の差は35時間もあります。

仮に310時間拘束の月が生じた場合は、他の月でその35時間分の穴埋めをしなければなりません。

業務上繁閑が明らかな場合は、計画的に年間の計画を立てることができるかもしれませんが、そうでない場合に最大基準を頼ることは諸刃の剣であるように感じます。

もちろんルール上、310時間拘束の月があることで直ちにルール違反になることはありませんが、この事実を受け止めたうえで制度活用されてくださいね。

2024年4月スタート!改善基準告示のうち拘束時間1週あたりのルール

さて、続きましては1週あたりのルールです。
まずは週を単位としたルールを確認してみましょう。

ここでは基本的なルールを解説しており、特例を含むルールは他の記事で紹介予定です。

1日あたりの拘束時間が14時間を超えるものは1週間に2回まで

見ていただいたとおり、このルールについては今までのものと少し異なりちょっと変則的で時間の制限ではなく回数の制限となっています。

変則的ではあるものの、ルールとしてはシンプルですね。
さらに、目安という言葉が添えられていますので努力義務として整理しておけば事足ります。

ただし、従前のルールでは時間数こそ違うものの必ず守らなければならないルールだったので、今後そのように改正される可能性も十分にあります。 しっかり守れるようにしておきましょう。

2024年4月スタート!改善基準告示のうち拘束時間1日あたりのルール

いよいよ最後は1日あたりのルールです。
早速見ていきましょう。

スクロールできます
原則上限特例
1日あたり13時間以内15時間以内16時間以内
拘束時間 1日あたりのルール

特例に関しては別の記事で取り上げます。カンタンにどの事業者でも使える制度でないことだけは覚えておいて下さい。

さて、この1日の拘束時間ルールの本題ですが1番身近な数字で意識しやすく、特例を使用しない限り15時間のラインを超えないようにコントロールすれば足るところなので、相談を受けていてもここのルールの理解に困っている方はあまりいらっしゃいません。

強いて言えば、15時間ぴったりまではいいのか、14時間59分以内に納めないといけないのか、この点でお困りの方がいらっしゃるぐらいでしょうか。
ちなみに、これは15時間ぴったりまではOKが正解です。

一方で、1年と1月それぞれの基準が単純な関係でないことは前述の通りですが、この1日あたりの基準も注意が必要です。次の表を見てみましょう。

月の拘束/勤務日数275時間284時間310時間
20日13.714.215.5
21日1313.514.7
22日12.512.914
23日11.912.313.4
24日11.411.812.9
25日1111.312.4
26日10.510.911.9
27日10.110.511.4
28日9.810.111
各月の拘束上限から勤務日数で割ったもの

それぞれの基準を勤務日数で割り戻した表です。なお、小数点2位以下は切り捨てています。
参考までに月のルールのチャプターで紹介した275時間も含めて一覧にしてみました。

もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、13時間を基準としてみても網かけのマスではそれを下回っています。
つまり、13時間まではいいんでしょ?という感覚で、それを基準に毎日乗務してしまうとあっという間に基準を超えてしまうんですね。

この基準はルールとしては当然覚える必要がありますが、他のルールと併せて見ていくことがとても重要です。

勤務時間が安定している場合は、275時間を目安に各月の平均出勤日数を整理して、上記の表を参考に日当たりの拘束時間の目安を把握しておきましょう。
また、勤務時間が不安定で先の予定も見通しが立たない場合は、日々、残りどれだけお仕事ができるか可視化しておくことが大切です。

改正基準告示(拘束時間編)まとめ

長文でしたが、ここまで本稿をご覧いただきありがとうございました。
運送事業を営むうえで、色々と守らなければならないルールがある中、本件はほんの一部でしかないにも関わらず、このボリュームです。
覚えていただくことも大切ですが、その他のルールを含めて暗記しきるのは困難だと思います。
こんな話があったな、という程度で構いませんのでザックリ覚えていただき、問題に直面したときはこの記事を見返してみて下さい。
さいごに、重要な論点を箇条書きにしておきます。
おさらいに活用してください。

  • 1年あたりの拘束時間3,300時間(3,400時間)は月の基準284時間を1年間続けると3,400時間も超えてしまう。
  • 月の拘束時間の目安は275時間(3,300時間÷12ヶ月)
  • 月の拘束時間310時間の上限を使用した場合、他の月へのしわ寄せが35時間程度発生する
  • 1日あたり拘束時間13時間で乗務を続けた場合、乗務可能な日数は月あたり21日程度
もしお役に立てたならシェアしてくれると嬉しいです
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

運送業などを経て行政書士事務所を開業。 一般貨物自動車運送事業の手続きを始めとした自動車関連業務の手続きに特化。

目次