2024年改正!改善基準告示の分割休息とは?特例ルールを徹底解説

改善基準告示に関する分割休息の説明図
ご相談者さま

納品のスケジュール的に拘束時間が15時間ギリギリになりそうだ。
間に合えばいいけど、不安だなぁ。。。

行政書士土井孝仁

複数の納品先があるんですね。
納品スケジュールの感覚はどのようになっていますか?

ご相談者さま

すぐに納められるところもあれば、3時間以上空いてしまうこともあるよ。
こっちの都合を押しつけるわけもいかないし、参ったなぁ。

行政書士土井孝仁

それ、特例の分割休息を使えば、不安なく余裕をもって運行できるかもしれません。
ぜひ、学んでいってください。

目次

改善基準告示 特例ルール「分割休息」とは?

改善基準告示に定められたルールのうち原則とされているものは、多くの事業者が守れるようなものを想定して作っています。
ただ、世の中には普通のルールに従っていてはどうにもならないケースが山ほどあるわけです。
そのイレギュラーに対応するため、特例というものがいくらか設けられており、条件を満たす場合に限り、ルールがいくらか緩和されるんですね。

今回は、この特例のうち「分割休息」を紹介していきます。
まず、分割休息の概要ですが、読んで字の通り休息時間を分割して与えることができるのです。
ただ、やみくもに分けて与えれば良いものではなく、緩和された分、デメリットもあります。

つぎのセクションではこの特例の要点を抑えていきましょう。

行政書士土井孝仁

本来、休息時間は継続9時間を下回ってはなりませんでしたね

【超重要】特例ルール「分割休息」のポイント

さて、まずはこの分割休息の特例を活用するためにゼッタイに外せない6つのポイントを抑えておきましょう。

  • 1回の休息時間は3時間以上必要
  • 分割できるのは3回まで
  • 分割回数に応じて取らなければならない休息時間が異なる
  • 始業から24時間を基準として考える必要がある
  • 全ての運行を分割休息で計画することはダメ
  • 分割休息ごとに点呼が必要になる

それぞれのルールが難しく感じることはないと思いますが、6つ全部をしっかりこなしていくのは大変だと思います。
分からなくなったらまたこの記事に戻ってきて頂ければよいので、まずはそれぞれどういったルールになっているのか見てみましょう。

分割休息のルール詳細その1 「1回の休息時間は3時間以上必要」

さて、1つ目は「休息を分割して取得する場合、その1回の休息時間は3時間以上でなければならない」ということです。

特に難しいところはありませんが、強いて挙げるのであれば、例えば6時間休息したとしても、分割回数としては1回です。

3時間ごとに分割した回数が自動的に増えていくワケではないので、その点はしっかり整理しておきましょう。

分割休息のルール詳細その2 「分割できるのは3回まで」

続いては、分割休息の回数に関するルールです。
ズバリ、「分割できる回数は3回まで」こちらもとてもシンプルですね。
いくら分割が認められているとは言え、3時間の休息を何度も与えれば良いというワケではないということです。
ここもしっかり整理しておきましょう。

分割休息のルール詳細その3 「分割回数に応じて取らなければならない合計休息時間が異なる」

続いてのルールはちょっとだけ、変則的です。
分割が行なわれた回数ごとに、取らなければいけない合計の休息時間が変わるというものです。
まずはどのように変わるのか見ていきましょう。

  • 2分割の場合・・・合計10時間以上
  • 3分割の場合・・・合計12時間以上

このように分割回数が増えると、合計で取らなければならない休息時間が増えてしまうんです。
細切れの休息では、身体は休まらないでしょ?ということですね。
また、その1とその2のルールと併せて整理をすると、以下のようになります。

パターン/回数1回目2回目
2分割休息の場合
パターン/回数1回目2回目3回目
10
3分割休息の場合

1回の休息が3時間を下回らないように3分割、そして合計休息時間を意識する。
単純なルールも組み合わせるとちょっと大変です。

繰り返しになりますが、見てすぐ暗記することは困難です。
もし分からなくなったら、またこの記事に戻ってきて確認すれば良いので、さらっと流して次のルールを確認していきましょう。

分割休息のルール詳細その4 「始業から24時間を基準として考える必要がある」

続いてのルールでは、大きな枠組みを整理します。
これまでは分割できる回数や、その分割された休息1回あたりの時間、取得するべき合計休息時間を学んできました。
今回のテーマはこれらのルールをどのように守るか?を指しています。

ズバリ、見出しの通りですが始業から24時間を基準として考える必要があるのです。

もう少し具体的にご説明すると、2分割の場合は始業から24時間以内に合計10時間の休息、3分割の場合は始業から24時間以内に合計12時間の休息を取る必要があるということになります。

意外と基本的なところは守れていても始業から24時間以内に取得することをすっぽかしている事例はよく見受けられます。
うっかりミスの代表例とも言えますので、ここは意識的に覚えておきましょう。

分割休息のルール詳細その5 「全ての運行を分割休息で計画することはダメ」

続いては、この特例を使いすぎることを抑制するルールです。
まずは、ルールを見ていきましょう。

  • 分割休息の日は1ヶ月程度の一定期間における全勤務数の2分の1を限度
  • 3分割の日は、連続しないように務める

いくら特例として認められているからといい、ドライバーさんには負担がかかってしまう制度に違いありません。
そのため、この特例が使える回数が決められているんですね。
細かいところですが、1ヶ月の2分の1と誤って覚えないように注意しましょう。
あくまで、1ヶ月の範囲の中で勤務した回数の2分の1回までしか使用できません。

ここもよく誤解が起きる重要ポイントなので、覚えておきましょう。

分割休息のルール詳細その6 「分割休息ごとに点呼が必要になる」

いよいよ最後の詳細ルールです。
このルールを見落としている方は、本当に多いです。

それもそのはずで、この分割休息の特例を案内する資料にはこの点について触れられていないことがほとんどです。
だからといって、全く難しいことはないので、このセクションを読んで覚えていってください。

まずは、ルールですが見出しの通り「分割休息ごとに点呼が必要になる」というものです。

ルール自体はシンプルで、この通り覚えて頂ければ良いのですが、見落としていた方にお伝えすると「なんで!?」というリアクションがほとんどです。

そのため、「何故、やらなければならないか」を説明致します。
その理由はズバリ、「休息時間の前後には点呼を執行しなければならないから」です。
通常の運行では、乗務を終えて休息に入る前には「乗務後点呼」をすることについては何の疑問もないことでしょう。
ただ、分割休息ともなると休息1回あたりの時間が短く、「休憩時間」のような感覚に陥ってしまうのでしょう。
もちろん、休憩時間の前後に点呼をする文化はないでしょうから、なんとなく、やらなくても良いように感じてしまうのも仕方ありません。
これを機に、あらためて「休息時間」と「休憩時間」が別物であるということを整理しておきましょう。

キーワードは「休息時間の前後には点呼が必要」です。

さいごに、ここまで乗務後点呼についてフォーカスして解説してきましたが、分割休息をとった後、乗務を再開するときには「乗務前点呼」も必要であることを忘れないでくださいね。

分割休息使用時における点呼の盲点

分割休息を活用した場合に点呼が必要であることは整理ができたと思います。
点呼の要否のほか、もう1つ盲点があるので併せて覚えておきましょう。
まずは次の画像をご覧下さい。

分割休息における点呼の盲点
分割休息における点呼の盲点を解説

この画像のうち、盲点となる部分は赤色の点呼(TEL)です。
運行の前後ではなく、運行途中に示されているのが分かるかと思います。
これはいわゆる「中間点呼」というもので、多くの場合は2泊3日の運行から意識しておけば良いのですが、分割休息を使用することで、1泊2日の運行から「中間点呼」が必要になります。

なぜ1泊2日の運行で中間点呼が必要になるかについては、オレンジ色の運行についてよく見てみましょう。
前後に休息があり、出先で点呼を受けるため乗務前・乗務後ともにTEL点呼になっています。
中間点呼が必要なケースは「乗務前後の点呼がいずれも対面で行えない乗務で実施が必要」と規定されていますので、バッチリ必要なケースに該当するというワケです。

とても限定的かつ希少なケースですが営業所に併設された休憩施設で分割休息を取り、乗務前後に対面点呼が実施可能な場合等はこの限りではありません。

せっかく点呼はしていたのに、中間点呼のことをスッカリ忘れていたというパターンもよくあるウッカリ事例のひとつです。
併せて整理しておきましょう。

中間点呼が必要であるということは「運行指示書の作成」も必要です。
こちらもお忘れなく!

改善基準告示 分割休息のまとめ

たくさんのルールを一挙に解説したので混乱していることと思います。
一度、ルール全体を整理しておきましょう。

  • 1回の休息時間は3時間以上必要
  • 分割できるのは3回まで
  • 分割回数に応じて取らなければならない休息時間が異なる
  • 始業から24時間を基準として考える必要がある
  • 全ての運行を分割休息で計画することはダメ
  • 分割休息ごとに点呼が必要になる
  • 分割休息を使用したほとんどのケースで中間点呼が必要

本文でも繰り返しお伝えしましたが、こんな細かいルールを1度に全て覚えきるのは困難です。
なんとなく、ルールの全体像を覚えていただいて、実際活用されるときはまたこの記事を開いてひとつずつ確認しながら進めてくださいね。

さいごに、ここまでご覧頂きありがとうございました。
分割休息をはじめとした特例ルールは知っておくだけで運行のバリエーションを豊かにすることが可能です。
日々の管理はとても大変だと思いますが頑張ってくださいね。

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この記事を書いた人

運送業などを経て行政書士事務所を開業。 一般貨物自動車運送事業の手続きを始めとした自動車関連業務の手続きに特化。

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